こども食堂へ講師派遣や教材提供 「すべての子に機会与えたい」

小中学生向け無料プログラミング教室を展開するNPO法人プログラミング教育研究所(東京都北区)はこのほど、公益財団法人東京都福祉保健財団(東京都新宿区)が公募する「子供が輝く東京・応援事業」の2022年度採択団体となり、23年1月から25年3月まで約2年間、助成事業を行います。今回、同法人の伊藤功一理事長に、事業の背景や今後の展望についてお聞きしました。

(聞き手/本紙編集長 山𦚰佑介)



―日本の小学校でのプログラミング教育の現状と課題を教えてください。

私たちは現在、東京都北区にある小学校の授業やクラブ活動のお手伝い、また区内にある二つのこども食堂でプログラミング教室を開催するなど、18年からプログラミング教育の啓発事業を行っています。

ただ、活動を通じて感じるのが「保護者の理解度や学校の体制によって、子どもたちの学習環境に大きな差が生まれている」ということです。文部科学省の「GIGAスクール構想」により小中学生に1人1台学習端末が配られ、教育環境は大きく前進したものの、その端末を実際の授業などで生かしきれていないと思います。

また、先生たちの中でもデジタルデバイスの取り扱いへの得意不得意が出ている現状があります。

「コンピューティング」を独立した教科として教えているイギリスなどとは違い、日本の小学校ではプログラミングやコンピューティングを学ぶ教科がありません。そのため、国語や算数といった今ある科目の中に「プログラミング教育」を組み込まなければならないので、得意な先生に学習内容・方法を任せてしまうといった事態が起きています。

その結果、学校や地域によって違いが出てしまうため、格差が生まれかねない状況と言えます。


―学校現場はもとより、日本全体としても課題があると言えますか?

正直、「日本全体がデジタルに弱い」と言わざるを得ません。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響でで全国の学校が臨時休校を余儀なくされたことを受けて、1人1台端末の実現時期の前倒しや、緊急時の在宅オンライン学習に備えた通信環境整備など、学校現場におけるICT化は一気に進みました。

しかし、コロナが落ち着きだした途端にやらなくなったり、その時よりも熱量が下がったりしている学校があると感じています。「対面強化」の風潮もあるようですが、やり方が戻ってしまっては意味がありません。せっかく進みだしたこの機会に、教育現場でもIT化の体制を確立させる必要があります。

例えばマイナンバーでもそうですが、日本自体がそもそもテクノロジーに対する理解が不足しているので、IT化は世界的に見ても遅いです。ですので、学校現場においてもICT化の体制が確立する要素が見当たらないのが現状です。


―民間のプログラミング教室の課題は?

プログラミング教育において、学校での体制が確立していない以上、塾に通うことは必要なことだと感じます。

ただ、「好きな人だけがやる」や「裕福な人だけがやる」では、格差がどんどん広がるばかりです。

それに、この格差が広がると、日本全体がデジタルに「弱いまま」につながりかねません。一部の子どもだけでなく、すべての子どもが成長できる機会・環境を提供するためのサポートが必要です。


―こども食堂などへの講師派遣や教材提供について教えてください。

こども食堂など非営利で学習支援を行う団体に対して、プログラミング教室開催のための講師派遣や教材提供を無償で行います。

この活動は東京都福祉保健財団が公募する「子供が輝く東京・応援事業」の助成を受けており、25年3月まで約2年間実施します。

具体的には、こども食堂など非営利で学習支援を行う団体に対し、プログラミング教室開催のための講師派遣を無償で行い、またmicro:bit(マイクロビット)480台を含むプログラミング教材を無償で提供するというものです。


―今後の展望を、どのように考えていますか?

この取り組みを活動拠点の北区から都内全域に広げ、普及させたいです。

また、現在広がりを見せるこども食堂の中には、学習支援に力を入れているところが多いと聞いています。そういったところとコラボレーションをすることで、1人でも多くの子どもにプログラミング教育の機会を提供できればと考えております。


―ありがとうございました。