【トップインタビュー vol.001】アルスクール 子どもを夢中にし、スキル伸ばす

探究型キッズプログラミング教室を展開するアルスクール(東京都目黒区)は、「子どもたちが楽しくデジタルを学ぶ場所を作りたい」との思いの下、2018年7月に創業。19年3月に自由が丘校を開校し、20年6月には新型コロナウイルス禍を機にオンライン校を開校しました。このオンライン校では1年以内の退会率0%を記録しており、子どもたちの興味を確実に持続させることができています。同社の村野智浩社長に、オンライン教育にも対応したオリジナル教材についてや、今力を入れている「デジタル学童」についてお話を聞きました。

(聞き手/本紙編集長 山𦚰佑介)



アルスクール 東京都目黒区 村野智浩社長(45)



主体的な学びが「探究型学習」

同社が実践する「探究型学習」を柱とするきっかけになったのは、村野社長の息子が当時、全日制オルタナティブスクール「東京コミュニティスクール」に通っており、そこで展開されている学びが面白いと感じたため。「人間の生きる力を育むという学びを展開していきたい」(村野社長)

また、村野社長はデジタル技術を駆使した「デジタルアート」の先がけとして知られるチームラボ(東京都千代田区)のプロジェクトマネージャーとして、システムを作っていたエンジニアでもありました。エンジニアとして、もうちょっといいプログラミング教育ができるのではないかと考えるうちに、「うちの子を行かせるのなら、もっとこういう学びがいいな」という思いが芽生え、事業を構想。17年11月から東京都中野区でプログラミング教室をテスト的に実施し、翌18年に創業しました。

同社が考える探究型とは、本質的には学習者である子どもが主体で学ぶということだといいます。「プログラミング教育にかかわらず、ドリル問題のように与えて無理やり解かせても、力は伸びません。逆に子どもが『やりたい』『作りたい』と思えば、勝手にどんどん伸びていきます。そういう学びが、探究型学習だと考えています」(村野社長)


スクラッチ生かし独自教材を開発

アルスクールの教材には、プログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」を採用しています。グローバルスタンダードともいえる優秀な言語である一方で、オンラインにはまだまだ最適化されていないことが多いと村野社長は感じておりました。

そこで、プログラミング部分はScratchをそのまま生かしつつ、学習システムや教材、作品共有ツールなどの独自機能を追加することで、オンライン教育にも対応したオリジナル教材「アルスパーク(教育版)」を開発。アルスクールの教室で導入しているほか、BtoB(企業間取引)向けサービスとしても展開しています。

「導入する企業や団体のやりたい教育に合わせて自由に組み込めるような、多様性がたくさんある仕組みを作っていきたい。だからこそ、フランチャイズモデルとしての展開ではなく、ソフトウエア利用という形で実施しています」(村野社長)

また、アルスパークではさまざまな学習管理機能を実装しています。そのうちの一つに、子どもたちが作った作品からスキルを評価する「スキル評価システム」があります。これは、子どもたちの作品に使われたロジックやその頻度、使われ方などを分析し、そのスキルを評価するというものです。

「プログラミング教育全体で退会率が高いというのが業界の課題になっていますが、この退会率の高さの一つの要因として、親だけでなく子どもたちも含め、成長が可視化できないことが挙げられます。こうした現状を解消するために、社内で試行錯誤とディスカッションを重ね、仕組みを作っていきました」(村野社長)


関りに重きを置き、廉価で楽しい場に

同社は現在、楽しくプログラミングを学べるカルチャーを作りたいという思いの下、デジタル学童事業に注力しています。 デジタルが複雑化していく中で、ゲームであったりデジタルを使った創作であったり、保護者がそれらすべてサポートするのは限界があると村野社長は考えています。

そこで、プログラミング教室の先生が並走しながら、子どもたちのつながりをサポートすることで、親が関与しなくてもデジタルの可能性を広げていけるような、かつそれが安全に遊べるような空間を作りたいという思いから、同事業を始めました。

「野球やサッカーみたいに子どもがやりたいからやる、子どもが好きだからやる楽しい習い事みたく、プログラミング教育もなっていっても面白いのではないか」(村野社長)

また、授業ではなく子どもとの関りだけにフォーカスすることで、廉価に、かつ楽しい場になるだけでなく、子どもたちが安心して遊べて、ほかの子たちとも交流できるデジタル上の居場所にもなりえます。